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呼吸調整の心理的、生理的研究

A. ゆっくりとした呼吸

・大学生を対象にした研究で、ゆっくりとしたテンポの呼吸(一分間に10呼吸)、速い呼吸(一分間に20回)を行ってもらい、呼吸調整前後に4つの心理質問紙に回答してもらった結果、ゆっくりとした呼吸を行った場合の方が、速く呼吸を行った場合よりも不安得点が低く、リラクゼーション得点が高かった。 Eisen et al., 1990

・ゆっくりとした呼吸は不安を低下させ、リラクセーションを増加させる機能がある。 Eisen et al., 1990

・ゆっくりとした呼吸がリラックス状態をもたらす。Ring et al., 1999

・ゆっくりとした呼吸時に心拍の変動性が高まり、副交感神経の活動が活発になる。Ring et al., 1999

・ゆっくりとした呼吸を行うことによって、血圧が低下する。 Allen &Crowell, 1990
・皮膚電気反応や指突容積脈波の値から、生理学的覚醒が低下する McCaul et al., 1979

B. 速い呼吸

・速いテンポの呼吸をしたとき心拍変動は低下した。(*一般的にストレス事態では心拍変動が減少することが確認されている)

テンポを指定せず自発的呼吸を行う条件では個人差が大きかったが、呼吸調整を行った場合と同じように、自発的呼吸のテンポが速いと心拍変動は低下する。 Stark et al., 2000

・ゆっくりとした呼吸(1分間に8回)、速い呼吸(1分間に30回)、呼吸調整せず自発的呼吸する3群に分けて、2分間の安静時の後、割り当てられた課題を行い、その直後に電気ショックが与えられ、脅威状況における心拍変動の高周波成分の振り幅(HF)の変化を見た実験においては

ゆっくりとした呼吸→変化せず
速いテンポの呼吸、自発的呼吸→有意に減少した。 sakakibara & Hayano, 1996

HFは副交感神経機能を示す指標であるとされている[廣田ら, 1994]ことから、速いテンポの呼吸および自発的な呼吸は、ゆっくりとした呼吸と比べて、副交感神経を低下させる(覚醒させる機能を持つ)と考えられる。

C. 呼気時間を長くする呼吸

・そもそも吸気時間と呼気時間は等しくはなく、安静時であれば吸気時間より呼気時間のほうが長く、さらに呼気後から次の吸気が開始されるまでには短いポーズ時間がある。このような呼気と吸気の非対称に焦点を当て、それを操作した実験がある。

@吸気2秒、呼気8秒する群、A吸気8秒、呼気2秒する群、Bそれぞれ等しく5秒ずつで行う群 で比較した結果、

@の群の被験者が他の群に比べて、皮膚電気反応の値が有意に低かった。 Cappo & Holmes 1984

・同様に鈴木ら[2000]が行った研究においても、呼気を重視し、吸気時間よりも呼気時間を長くすることが、ゆっくりとしたテンポで呼吸させることと同様に副交感神経優位な心理生理学的に健康な状態をもたらすことが出来るとした。

2) 胸式、腹式呼吸

・胸式呼吸を行ったときは体温が低下したが、腹式呼吸を行ったときには体温は低下することなく、安定していた。Becon & Poppen 1985

・腹式呼吸では僧帽筋の緊張が低下したが、胸式呼吸では筋緊張が増加した。Boyer & Poppen 1995

腹式呼吸はリラックス状態を引き起こすものであり、逆に胸式呼吸は整理的覚醒を高めるものであるといえる。

『身体心理学』

 
 
 
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