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人体に存在する元素は存在量により多量元素と微量元素に分けられる。

鉄の人体内存在量より多いものを多量元素、それより少ないものを微量元素といい、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(C)以外のもので生体が必要とする無機成分を、微量元素を含めてミネラルという。

種類と役割

生体に存在するミネラルの量は体重の約4%であり、そのほとんどは多量元素であるカルシウム(Ca)、リン(P)、カリウム(K)、硫黄(S)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(M)で占められる。

一方、生体に必要な微量元素は鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ヨウ素(I)、コバルト(Co)、セレン(Se)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、フッ素(F)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、ヒ素(As)などがあり、欠乏症状が認められ、投与によりその症状から回復、またそれを予防できるものを必須元素という。

ミネラルの生体利用効率に影響する要因

ミネラルの生体利用効率(bioavailability)とは、「食事を構成するそれぞれの食品中のミネラル含量のうち、実際に消化管から吸収され、体内諸器官の正常な構造と機能を維持する上での要求を満たすために利用される割合」のことである。

この概念は小麦粉や大豆などに含まれるフィチン酸により、カルシウムやマグネシウムの栄養的有効性が低下するという研究がきっかけになって生まれた。様々な要因が、生体利用効率に影響を与えることが明らかにされた。

それらは大きく3つに大別され、それらが相互に影響しあっていると考えられる。

・食事要因

摂取経路、化学形態、溶解度、ミネラル間の相互作用、他の食品成分との相互作用が上げられる。

たとえば、フィチン酸(イノシトール6リン酸)は穀物などに普遍的に存在し、ミネラルと作用してフィチン酸1モルに対し、ミネラル1~6モルの複合体を作る。フィチン酸のカルシウム、マグネシウム混合塩をフィチンといい、希酸には溶けるが、水には極めて溶けにくい。フィチン酸と金属イオンの化合物は腸管内pH では溶解度が低く不溶性部分は排出されるので、フィチン酸を大量に摂取すると鉄、銅、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などのミネラルが腸管から吸収されにくくなる

ラクトースはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどと結合し、複合体を形成することによって、恐らくミネラルの溶解性を高めるように改善することによって吸収を促進する。

難消化性糖質(フラクトオリゴ糖)は、カルシウム、マグネシウム、鉄の吸収を促進する。その作用部位は大腸であり、このとき大腸のカルシウム結合タンパク質(CaBP)が顕著に増加することがラットの実験で報告されている。このような生体利用性の向上は病態時にも認められているほか、カルシウム、マグネシウムに関してはヒトでも発現することが示唆されている。

・摂取する生体の側の要因

分子レベルで理解されるようになるまでは、その生理学的重要さにもかかわらず、金属イオンは哺乳類細胞がどのように吸収するのか理解されていなかった。

ラットから金属イオン輸送タンパク質がクローニングされ、その特性が解析された。この金属イオン輸送タンパク質は561個のアミノ酸からなり、12個の膜貫通ドメインを持つことが推定され、その発現は普遍的であるが特に十二指腸上部で高い。基質となるイオンの種類は極めて多く、本輸送タンパク質が関与する能動輸送はプロトンと共役しており、細胞の膜電位に依存している。食事中の鉄が欠乏すると発現量が多くなっていることから、このタンパク質は腸での鉄吸収の鍵になっていると考えられている。

活性型ビタミンD3である、1α,25-(OH)2D3はカルシウムの能動輸送にも受動輸送にも効果的に作用し、上述のカルシウム結合タンパク質(CaBP)のmRNAの合成を促進する。ビタミンD欠乏時にはほとんど検出されないので、消化管ではこのCaBPはカルシウム吸収機構に寄与しているものを考えられる。

・環境要因

水分と体液の組成

通常、人体には体重のおよそ60%の水が含まれている。その由来は、飲料水、食物に含まれる水、、そして食品成分の代謝によって生じる水(代謝水)である。

体内の水は細胞内液(40%)と細胞外液(20%)に大別される。細胞外液はさらに血漿と組織間液とに分けられ、それぞれ体重の5%、15%を占める。

細胞外液では、ナトリウムが主な陽イオンであり、塩素が主な陰イオンであるのに対し、細胞内液ではカリウムイオンとHPO4(2-)が主体となっている。この組成の違いは、細胞膜に存在するNa+,K+‐ATPアーゼポンプが、ナトリウムをたえず細胞内から細胞外へくみ出し、カリウムを細胞外から取り込んでいることによる。

生体内ミネラルの恒常維持性

ミネラルは通常食物から摂取され、摂取されたのと同じ量が便、尿、汗から排出される。

体液中の電解質恒常性維持は副腎皮質ホルモンの関与によって、たとえば、塩辛い漬物などを多量に食することにより、ナトリウムの摂取が増えるとナトリウムの排出も増加し、ナトリウム出納は平衡状態となる。

また、甲状腺および副甲状腺性ホルモンの関与により、たとえば、血漿中のカルシウム濃度が低下すると、その濃度を保つために骨からカルシウムを動員する。
 
 
 
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