STRATEGIC TRAINING SYSTEM

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●足部、足関節について、その1

■足趾把持トレーニングが足趾把持筋力および立位時重心動揺に与える影響

【二足歩行を行う人間にとって、足底および足趾は唯一の地面との接地面であり、安定した立位姿勢を保持するためにも、足把持力は必要とされる。】

【足趾は元来、手指と同等のレベルの巧緻性を有しているとされており、人間の祖先であるサルは、足趾によって木などを掴むことが出来たが、人間の二足歩行に適応することによって手指と同等レベルの巧緻性を完全に失ったとされている。】

【さらに近年、裸足生活の減少、履物の変化などにより、足部機能は低下の一途を辿っている。近年、土踏まずの形成有無、浮指等の観点から、足部の形態・機能が、アスリートの傷害やパフォーマンスにも関係することが報告されている。】

【その足趾把持筋力の強化方法として、砂浜トレーニングやタオルギャザー、母指外転トレーニング、ボール掴みなど多くのトレーニングが取り上げられているが、機能を高める際にどこの機能に目的を置くかによって、そのトレーニング方法も変わると考える。】

竹井らは足趾トレーニングの効果は約 3 週間で生じ、トレーニングを行っても筋肥大による筋力増強は得られないと報告をしている。

■一方、足趾把持筋力の強化による片足立位バランスへの影響についての報告もなされている。

片足立位の安定は、歩行による「つまずき」の減少につながることが考えられ、そのことから足趾トレーニングは転倒予防につながることが示唆されたとされているが、両足立位バランスにおいての報告は少ない。

また、足趾把持筋力と重心動揺の相関では、男性には見られるものの、女性には男性同様の結果が得られないとされることから、女性には効果が得られにくいと考えられる。

さらに、重心動揺は年齢とともに変化するとされており、若年者では短く、20 歳代から 50 歳代までは長いとの報告もあるが、同じ年代でもばらつきが見られることから生活状態の差などに基づく姿勢制御系の差があると考えられている。

【このように、足趾把持筋力と身体機能との関連性の検討は多く見られるが、足把持トレーニングを行うことによる筋力増強効果と立位姿勢保持に及ぼす影響を併せた見解は未だ得られていない。】

そこで本研究は、東海大学に所属するスポーツ経験のある女子学生を対象に、足趾把持トレーニングが足趾把持筋力および立位時重心動揺に与える影響を検討することを目的とした。

つづく

『足趾把持トレーニングが 足趾把持筋力および立位時重心動揺に与える影響 』山田 洋・内山秀一・野田亜沙美・山本結女・小河原慶太

●足首、足部、足趾は、建物で言えば基礎のようなものです。

建物であれば、基礎が傾いていたり、歪んでいたり、強度に不備があると、その上に建てた建物は不安定な状態となり、使用自体に危険を伴ったり、場合によっては取り壊して基礎から作り直しということになると思います。

構造的にも、デルマトーム(一本の脊髄神経に由来する皮膚への一般感覚線維の支配領域)的にも、筋膜的にも、経絡的にも、運動連鎖的にも、足首、足部、足趾は非常に重要ですので、様々な側面から考えていってみましょう。

追伸、以前、「足関節と靴について」というテーマについて、その1から10まで書きましたので、そちらも知りたいという方は過去の記事を遡ってみてくださいね。


●足部、足関節について、その2

■考察

1.各群におけるトレーニング前の測定値からみた測定の妥当性についてプレテスト時におけるコントロール群とトレーニング群の比較では、足趾把持筋力、開眼重心総軌跡長、閉眼重心総軌跡長、つま先立ち重心総軌跡長のいずれにおいても、群間に差はみられなかった(表 2)。

村田らの報告によると足趾把持筋力は女性平均が 8.3 s±2.8 であった 7)。本研究においてのプレテスト時の平均がコントロール群において 14.8±3.3 s、トレーニング群において16.2±2.5 sとトレーニングを行う前から高い値を示している。

【これは、競技を行っている被験者を対象としたため、日頃のトレーニング効果等から足趾把持筋力が優れていたのではないかと推察される。】

2.トレーニングが足趾把持筋力に与える効果足趾把持トレーニングにより、足趾把持筋力の値が有意に増大した(表 2, 2)。

福田らは、タオルギャザー、ゴムボール握り、ムカデ歩きのトレーニングを行い、3週間後に有意な改善が生じる 8)と報告している。

【しかし、本研究でタオルギャザーとゴムボール握りのみでも、足趾把持筋力に有意な差が見られたことから、本研究のトレーニング内容でも十分にトレーニング効果が表れることが示唆された。】

【しかし、足趾にはそれぞれ役割があり、母趾と2〜5趾は筋力が異なるため、目的に応じて対象足趾を変えたトレーニングが必要であり、その機能について詳しい検討を行うことで、さらに高いトレーニング効果が期待できると考える。】

【また、トレーニング初期にはタオルギャザーやボール握りがわずかにしかできなかった被験者も数名いたが、トレーニングの実施に伴い、被験者よりすべてのトレーニングを楽に行えるようになったとの内省報告もあった。また、普段から躓くことが多いとする被験者には、以前より躓きにくくなったという報告を受けた。】

3.トレーニングが重心動揺に与える効果

重心動揺の軌跡長は、開眼両足立位時にトレーニングの影響はなかった(表 2, 3)。一方、軌跡長は、閉眼両足立位時、開眼爪先立ち時に、有意に短縮し(表 2, 4, 5)、動揺が小さくなることを示した。

本研究は足趾把持トレーニングが重心動揺に及ぼす影響を明らかにすることを目的としたため、その結果がパフォーマンスの向上や転倒予防につながるかは直接的には検証していない。

しかし、吉本らは、片脚立位時の安定は、歩行中の振り出し時の安定につながるとされており、この安定は歩行による「つまずき」の減少につながることを報告している。

【このことから、本研究においても総軌跡長の値の減少が見られたことにより、立位の安定性が向上し、身体機能につながり、足把持トレーニングを行うことによる、転倒リスク改善等に期待できる。】

4.足趾把持筋力と重心総軌跡長間の関係についてプレテスト時(トレーニング前)における全被験者(n=19)に対して足趾把持筋力と重心総軌跡長間の相関を検討した結果、すべてにおいて有意な相関関係は認められなかった(図 6)。

【緒言で述べたように先行研究において、足趾把持筋力と重心動揺の間の相関は、男性には見られるが、女性にはみられないとされている。本研究の結果は、先行研究と同様であり、方法論および結果の妥当性を示唆していた。】

同様にポストテスト時(トレーニング後)における全被験者(n=19)、コントロール群のみ(n=9)、トレーニング群のみ(n=10)に対して足趾把持筋力と重心総軌跡長間の相関を検討した結果、すべてにおいて有意な相関関係は認められなかった。

【これらの結果は、トレーニングにより足趾把持筋力が増大するものの、これらが必ずしも重心総軌跡長にダイレクトに影響を及すものではないことを意味していた。】

三谷らは、女性 25 名に対して本研究とほぼ同様の設定で実験を行い、足趾把持筋力と重心動揺総軌跡長との間に相関関係が認められなかったことを示し、これらに関与する要因として感覚系入力、中枢の情報処理・出力系、足底の固有受容器を挙げ、最大筋力にみられる量的機能でなく、身体動揺に適した足趾の質的機能が関与したのではないかと考察している。

【本研究で認められた重心動揺総軌跡長の短縮についても、足趾把持トレーニングにより向上した最大筋力以外の要因として、これら感覚系・神経系における機構の変容が関与していたと推察される。】

『足趾把持トレーニングが 足趾把持筋力および立位時重心動揺に与える影響 』


●足部と足関節について、その3

■大学サッカー選手の足部 ・ 足関節スポーツ傷害に対する足部アーチ保持筋力トレーニングの効果

■目的

サッカー競技において、足関節や足部の外傷は発生頻度の高い外傷とされている。【また、足関節や足部の傷害発生においては、足部アーチとの関連性も認められると報告されている。】

そこで今回、スポーツ傷害の予防を実施していくにあたって、足部アーチの保持に関与する筋のトレーニングの効果を検証することを目的とした。

■方法

対象は測定時に運動器疾患のない大学サッカー選手30名(平均身長175.5±6.8cm、平均体重68.4±6.6kg、平均年齢20.1±0.3歳)とした。

全ての対象者について、身体組成、足趾把持筋力、足アーチ高率測定、10m全力歩行、前方へのファンクショナルリーチテスト、最大1歩幅、閉眼片脚立位保持時間を検査項目として測定した。

足趾把持筋力、10m全力歩行の順で最も近似した値の者でペアを組み、各ペアにおいて学籍番号の小さい方をトレーニング群、大きい方をコントロール群として2群に割り付けした。

トレーニング群には定期的に足部アーチ保持筋力トレーニングを実施し、コントロール群は実施しなかった。1年後に両群ともすべての項目について再計測するとともに、1年間のスポーツ傷害の調査を行った。

調査したスポーツ傷害は、サッカー競技中に発生し、指定の病院を受診させ、2日以上練習に復帰できなかったものとした。トレーニング群の足部アーチ保持筋力トレーニングは6種類の運動を、まず週に3回、3 ヶ月間実施し、以降週2回実施した。

■内容は

1)足趾でのタオルギャザー練習

2)両足部を平行に開いたムカデ歩き(足を平行にして素足で立ち、足趾で床をたぐるようにして進むように指示。)

3)両足部を「ハの字」に開いたムカデ歩き(足を「ハの字」にしてムカデ歩きを指示。)

4)ゴムボールを握って離す繰り返し運動

5)ゴムチューブを用いた足関節内返し運動

6)ゴムチューブを用いた足関節外返し運動である。

トレーニング群とコントロール群それぞれの各検査項目の訓練前後の比較は対応のあるt検定、トレーニング群とコントロール群のベースラインと1年後の検査項目の比較は対応のないt検定、発生したスポーツ傷害発生率(1000player-hour当たりの傷害発生数)の比較にはχ2検定を行った。統計的な有意差を5%未満とした。

■結果

【トレーニング群の1年後においては、足趾把持筋力、最大1歩幅、閉眼片脚立位保持時間が有意に増加した(p<0.05)。】その他の項目においては有意な差は認められなかった。

【トレーニング群の足関節捻挫の発生率は0.06/1000player-hours、コントロール群は0.33/1000player-hoursで、トレーニング群では有意に低かった(p<0.05)。】その他の傷害においては有意な差は認められなかった。

■考察

【足部アーチ保持筋力トレーニングにより、足関節捻挫の発生率低下、運動機能や動的バランスの改善が導かれた。今回の足部アーチ保持筋力トレーニングは、足趾把持筋群と足関節内返し ・ 外返し筋群に対してのトレーニングに分けられる。】

【足趾把持機能の向上により、足底部(母趾球、小趾球、踵部)の支持基底に対し、足趾機能の関与が増大し、姿勢制御時の機能的支持面の拡大につながったこと、

さらに足趾が体重支持に関与することで姿勢制御の感覚器(情報収集機能)としての足底(特に母趾底部)のメカノレセプターが賦活されたことにより姿勢制御能やステップ反応 ・ 踏み直り反応の改善が得られたと推測される。】

【また、足関節の内返し ・ 外返し運動により、後脛骨筋と長腓骨筋がともに活動性を増したことが予測される。後脛骨筋と長腓骨筋は作用し合って横アーチと内側縦アーチを支持する機能的な「スリング」を形成し、足アーチの保持に関与する。】

【足趾把持筋力向上とともに足アーチの安定性の向上に関与したのではないかと考えられた。

さらに、足部アーチ保持筋力トレーニングにより足底メカノレセプターが賦活し、足・膝関節周囲筋の同時収縮が促通されることによっても動的バランス能力の改善が得られたと考えられた。】

そうしたことから、サッカー競技中の転倒や接触プレー時の安定性、ジャンプ着地時の安定性が向上し足関節捻挫の発生率に影響を与えたのではないかと考えられた。

近年、スポーツ傷害の予防や再発防止の取り組みが積極的に行われている。今回、我々が行った足部アーチ保持筋力検査とそのトレーニングは簡便に実施することができるものであった。また、足関節捻挫の発生との関連から足部アーチ保持筋力検査とトレーニングの有用性を示すことができた。

『大学サッカー選手の足部 ・ 足関節スポーツ傷害に対する足部アーチ保持筋力トレーニングの効果』


●足部、足関節について、その4

Lisa Mareeさんのyoutubeballet feet exerciseseveryday foot workoutを是非見てみてください。

まさに

手と同じ感覚で足を動かされています(o;

https://youtu.be/2nh9fdJftCE

https://youtu.be/ChPSIWUguqo


●足部、足関節について、その5

■足把持力と疾走速度との関係

■はじめに

走動作は幼児期より観察されるようになり,67 歳ごろまでには基本的な走動作が定着するといわれ,日常生活や競技スポーツなど様々な局面で見られる基本的な運動である.

疾走能力の指標の一つである疾走速度は,多くの競技スポーツで要求されるパフォーマンス能力でもあり,疾走速度の向上を目的とした動作分析や筋電図学的研究などの様々な研究により、多くの知見が得られている.

しかしながら,これまでの研究では,足趾と走動作に関する研究は少ない.

【歩行動作や走動作において,足底や足趾は地面と接する重要な役割を持ち,安定した立位姿勢および歩行動作や走動作には,足で物をつかむ力,いわゆる足把持力は重要であると考えられる.】

近年になり,足把持力測定器の開発などが進み,高齢者を中心として注目されるようになった.これまで,足把持力の低下は転倒の危険因子となりうることや,転倒経験群と非経験群では,転倒経験群の方が非経験群に比べて足把持力が低いことが明らかになっている.

【また,宇佐波らの若齢健常者に対して足把持トレーニングを行った研究において,50 m 走や垂直跳びの記録の向上を報告し,足把持力は高齢者の転倒の予防だけでなく,疾走速度や跳能力の向上に有効であることが明らかにされている.】

しかしながら,足把持力と歩行速度との関係についての研究は多くあるものの,疾走速度との関係について検討しているものは少ない.

【さらに,裸足や裸足に近い靴を履いて行う裸足ランニングが注目され,足底や足趾で地面をしっかり掴むことや地面を感じながら足底や足趾をより意識したランニングとして広まっている.

このことから,足把持力が疾走速度に影響するのではないかと考えられ,裸足は靴よりも足趾の影響が強いのではないかと考えられる.】

足把持力と疾走速度との関係を明らかにすることで,歩行速度や疾走速度などの移動能力向上のための基礎的な身体づくりや運動能力の向上に貢献できるのではないかと考えられる.

そこで,本研究は足把持力と 50m走の計測を行い,50m走を裸足と靴の二つの条件で測定することで,足把持力と疾走速度との間に関係があるのか,また,裸足と靴でその関係が異なるのかについて検討することを目的とした

■考察

【本研究では,足把持力と疾走速度との関係について,裸足と靴の 2 条件で検討を行った.裸足と靴の疾走速度の比較の結果,靴よりも裸足の疾走速度が大きいことが明らかになった.】

また,足把持力と疾走速度の関係については,両条件ともに正の相関関係が認められ,同等性の検定ではその相関係数には差が認められなかった.

疾走速度について,小学生を対象とした田附の研究と同様の結果であり,裸足になることで疾走速度が大きくなり,タイムの短縮につながるのではないかと考えられた.

この要因として,田附は接地直前の脚の振り下ろし速度が影響していると報告しており,本研究においても,接地直前の脚の振り下ろし速度の向上が裸足の疾走速度の増加の一要因ではないかと推察された.

【また,吉田と中村は砂浜での裸足トレーニングを行うことで浮き趾が改善していることを報告している.これは,砂浜は床反力が小さく,地面を蹴る・踏ん張るために足趾を使い,前足部で地面を捉えることで大腿を引き上げることにつながっていると推察している.】

【本研究においても,裸足では靴に比べて直接地面を捉え・蹴るため,足趾を中心とした前足部をより使用している可能性が示唆された.

このことからも,本研究における裸足の方が靴よりも足趾の影響が強いのではないかと推察したが,両条件で疾走速度と足把持力に正の相関関係が認められ,相関係数には差が認められなかった.

これは,裸足という条件だけでなく,走動作において足把持力をはじめとした足趾が重要であると推察された.】

『足把持力と疾走速度との関係』山田 健二須藤 明治


●足部、足関節について、その6

■その5のつづき

本研究の結果は,歩行動作と同様に走動作においても,足趾は蹴りだし時の前進推進力の役割を果たしている可能性が示唆された.

【近年の研究により,一般人に比べてスプリンターはより長い足趾を有し,下腿が短いことが明らかになっている.さらに,スプリンターがより長い前足部長を有していることも報告されている.】

それに加え,シミュレーションによって足趾を長くした場合,加速疾走中の支持期において発揮される加速力積が増加するという結果も示されている.

【これらのことからも歩行動作や走動作において,足趾は推進力という重要な役割を担っていると考えられる.この推進力の向上は,前方への重心移動時に脚の運びが曲線的なものから直線的なものへとスムーズに行われるようになったためと考えられている.】

【これにより,歩行動作や走動作の重心移動の安定においても足把持力は重要であることが示唆され,基礎的な身体づくりに足把持力は有効な体力の一つであると考えられた.】

本研究の限界としては,走動作時の動作分析および足圧分布や重心変化についての分析を行っていないため,重心移動については推測にとどまってしまうことがある.これらについては,今後の課題として挙げられる.

『足把持力と疾走速度との関係』山田 健二, 須藤 明治

●衛生面、安全面の観点から、裸足でトレーニングできるジムや、裸足で走れるきれいな砂浜などが近くにあるという方はあまり多くないと思いますが、もしそのような環境がある方は是非とも試してみてください。

アーノルド・シュワルツェネッガーなど昔のビルダーは裸足でスクワットやっていましたが、これは足裏の感覚を養うのに本当にオススメです。